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住宅の「気密性能」が必要な4つの理由。気密性能が省エネ基準から消えたワケ

住宅の省エネ性能の基準の一つ「気密性能」。なぜ気密性能が必要なのか。気密性能って国の基準なの?この記事では気密性能の必要性や気密性能が省エネ基準から消えた理由について分かりやすく解説いたします。

もくじ

1.気密性能とは?

2.国が考える気密性が必要な理由

2-1 省エネで部屋の温度環境を快適にする

2-2 断熱性能を低下させない

2-3 壁の中に濡れるのを防ぐ

2-4 換気を計画通りに行う

3.省エネ基準と気密性能

3-1 次世代省エネ基準と改正省エネ基準

3-2 なぜ国の基準に気密性能が削除されたのか

3-3 気密性能基準が削除された本当の理由?

3-4 なぜハウスメーカーは気密性能に前向きではないのか?

4.換気計画も一緒に考えたい

5.まとめ

1.気密性能とは?

住宅の性能値を測るひとつに「気密性能」があります。気密性能は、「C値」という数値で表されます。C値は隙間相当面積とよばれ、隙間の合計面積(㎠)を建物の延べ床面積(㎡)で割って算出され、単位は㎠/㎡で表されます。C値は、実際に建てられた建物で、専門の気密測定試験機を使用して測定されます。気密性に配慮していない一般的な住宅のC値は10.00~4.00程度、「高気密住宅」とよばれる住宅のC値は1.00以下が望ましいとされています。

2.国が考える気密性が必要な理由

「住宅の改正省エネルギー基準の解説」(財団法人 建築環境・省エネルギー機構:国土交通省の外郭団体)によりますと、気密性を高めることが必要な理由は以下の4つとされています。

①漏気負荷を減らし省エネルギー化と室内温度環境の快適性向上を図る
②壁体通気を抑制し、断熱性能の低下を防止する
③壁体内結露を防止する
④計画換気の性能保持

2-1 省エネで部屋の温度環境を快適にする

①漏気負荷を減らし省エネルギー化と室内温度環境の快適性向上を図る
気密性が低いと、夏は暑くて湿度の高い空気が室内に入ります。冬は寒くて乾燥した空気が室内に入ります。
暑い夏、エアコンで室内を冷やしますが、温度が高く湿度も高い空気が入ってくるためエアコンの稼働が高くなり、電気代がかさむことになります。
冬に室内を温めようと暖房をつけますが、暖かく加湿した空気は外に漏れていき、冷たく乾燥した空気が室内に入ってきてしまいます。
夏も冬も温湿度調節に電気代や燃料代がかさんでしまいますから、それを防ぐために家の隙間を少なくすることが必要になります。そうすれば、室内環境は快適になり、省エネになります。
ここでは温度環境を快適にするとありますが、湿度環境にももちろん快適になります

2-2 断熱性能を低下させない

②壁体通気を抑制し、断熱性能の低下を防止する
どれだけ高性能な断熱材を使用していても、隙間があると意味がありません。極端な例かもしれませんが、すごく暖かいダウンジャケットを着ているのに前のファスナーが全開であれば寒いに決まっています。冬暖かくすごすためには、キチンとファスナーを閉めなければ冷気を抑えることはできません

2-3 壁の中に濡れるのを防ぐ

③壁体内結露を防止する
冬は寒いため、少しでも暖かくすごすために室内の温度を高めると同時に湿度を高くすることによってすごしやすい環境になります。隙間が多いと湿気が壁の中に流れ込み、内部結露すると柱などを腐らせる原因になります。カビの原因にもなるため隙間を少なくすることが大切です。

2-4 換気を計画通りに行う

④計画換気の性能保持
建築基準法により、室内の換気を行うことが義務付けられています。生活していると、水蒸気や二酸化炭素、体臭など汚染物質が発生します。これらの汚染物質を室内から屋外へ排出する「換気」が必要になります。

シックハウス症候群が注目され、換気に目を向けられたのはよかったのですが、気密性能が悪いと、住宅の中で隙間が大きい場所と隙間のない場所ができていることがあります。室内全体で換気が行われればよいのですが、換気扇の近くの大きな隙間から給気を行ってしまい、空気の淀んだ空間ができてしまう「ショートサーキット」という現象が起きてしまいます。これを防ぎ計画的に換気を行うためには気密性能は欠かせないのです。

3.省エネ基準と気密性能

これまでのとおり、省エネ性能に気密性能が欠かせないことが分かりました。では国の基準ではどうなっているのでしょうか。

3-1 次世代省エネ基準と改正省エネ基準

1999年に制定された次世代省エネ基準ではC値の基準が設定されていました。北海道・東北3県はC値2.0以下その他の地域はC値5.0以下と定められました。
しかし2014に制定された改正省エネ基準では、気密性能を表すC値の基準が削除されました。

3-2 なぜ国の基準に気密性能が削除されたのか

2014年の改正省エネ基準でC値の基準が削除されました。それ以降現在まで日本では気密性能に関する基準はありません。
国の説明によりますと、
「一定程度の気密性が確保される状況にあること、また住宅性能表示制度における特別評価方法認定の蓄積により、多様な方法による気密性の確保が可能であることが明らかになってきたことなどから気密住宅に関わる定量的基準(相当隙間面積の基準)は除外されました。」
という説明がされています。

3-3 気密性能基準が削除された本当の理由?

前真之東京大学准教授の書いた「エコハウスのウソ」という本があります。
この本に、気密性能が削除された理由が書いてあります。

なぜ気密の規定は消えたのか?
相当隙間面積は完成後に測らないと分からない!
役人 図面でチェックできないとなると困るな~
大工 この忙しいのにいちいち計測なんてやってられるかい!
→2009年にH11基準の相当隙間面積の規定が「削除」される

とあります。

気密性能が削除されたのは「大手ハウスメーカー」の力によってという噂もあります。

3-4 なぜハウスメーカーは気密性能に前向きではないのか?

高品質住宅の基本は、高断熱・高気密・高耐震です。
この中で高断熱と高耐震は書類上で計算値を出して算出します。断熱材や耐震工法を現場で変更することは考えられませんが、きちんと施工されているかどうかは現場でチェックしないといけません。耐震性は検査項目に含まれますから、最低限は担保されるとはいえ、断熱に関する検査は自主検査しかありません。
一方、気密性能は現場での気密試験でしか計測できません。気密性能を上げるためには、現場の職人の高い施工精度が必要不可欠になります。特にプレハブ工法採用のハウスメーカーでは対応が難しいと思われます。
このため大手ハウスメーカーでは、断熱性能・耐震性能には取り組むが、気密性能に前向きに取り組まない理由かもしれません。

4.換気計画も一緒に考えたい

せっかく気密性能を高めても、換気計画がおろそかになると台無しです。換気方法は現在自然吸気・機械排気の第三種換気と、機械給気・機械排気の第一種換気が主流です。
気密性能を高めるのは室内環境をよくすることです。それも踏まえて換気についても最適な換気方法を採用しましょう

5.まとめ

気密性能は、現場の施工品質に左右されます。そして何より机上の書類上の数値では意味がありません。現場測定でしか測定結果が出ないのですから、気密性能を確かめるのならば気密測定するしかありません。自信のある工務店やハウスメーカーなら気密測定することに何の躊躇もないでしょう。何かしら理由をつけて気密測定を渋るのであれば、気密性能はあやふやなままにするか、依頼する会社を変えるしかありません。そしてその会社がどんな断熱材を使用するのか、どんな窓を採用しているのか、気密性能を高めるための工法など詳しく聞いてみましょう。この気密性能が高いか低いかでその家に住む快適性が一生変わると思っても言い過ぎではないと思います。

 

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