高気密高断熱住宅とは?メリット・デメリットを解説します!
2022年04月12日
世の中の省エネのニーズの高まりにより、住宅でも省エネの波が押し寄せています。省エネ住宅でよく耳にする「高気密高断熱住宅」。でも、「高気密・高断熱」ってよく聞くけど、そもそも何なの?省エネなのは分かるけど、メリット・デメリットってあるのかな?
そんな疑問にお答えいたします。高性能住宅をお考えの方はぜひ参考にしていただければと思います。
もくじ
1.高気密・高断熱住宅とは?
1-1 高気密とは?
高気密とは、言葉のとおり住宅内の気密が高いことです。壁や天井、床などに隙間があると、室内から室外、室外から室内へ空気が出入りしてしまいます。これを「すきま風」と呼んだりします。気密が悪いと室内の温度を保てなくなってしまいます。冬にせっかく温めた室内の空気が隙間をとおって室外に出て行ってしまいます。
では、気密を高くするにはどうすればよいでしょうか。精度の高い建築部材や、防湿シート、断熱材、気密テープなどを使い隙間を埋めることで気密を高めることができます。この気密を高めた住宅を高気密住宅とよびます。
気密性能はC値という値で示されます。C値とは、住宅における相当隙間面積のことで、建物全体にある隙間面積(㎠)を延床面積(㎡)で割った数値で表されます。大阪にある「住まいstudio」での設定ですと、昔の家(昭和55年)の住宅C値は14.65、今の家(平成28年)の住宅C値は4.33。これからの家の住宅C値は0.7となっています。
C値が1.0以下を高気密住宅ということがいえるでしょう。
1-2 高断熱とは?
高断熱住宅とは、断熱性能が高い住宅のことです。木造住宅の場合、柱をはさむように外壁と内壁があります。熱は暖かいところから冷たいところへ移動する性質があります。夏は室外から室内へ、冬は室内から室外へ熱が逃げてしまいます。その熱の伝導を防ぐのが断熱材です。外壁と内壁の間に断熱材を用いたり、断熱性の高い窓を設置することで断熱を高めます。この断熱性能を高めた住宅が高断熱住宅です。
断熱性能はUA値という値で示されます。UA値とは、外皮平均熱還流率と呼ばれ、室内と外の温度差が1度あるときに、家全体で外皮(窓・屋根・外壁など屋外の空気に触れている部材)1㎡あたりどのくらいの熱が逃げるかを示したものになります。
先ほどご紹介した「住まいstudio」での設定ですと、昔の家(昭和55年)の住宅UA値は1.43、今の家(平成28年)の住宅UA値は0.85。これからの家の住宅UA値は0.45となっています。
UA値の基準ですが、岐阜県西濃地域(6地域区分)では、①建築物省エネ法(H28省エネ基準)では0.87以下。②ZEHでは0.6以下。③HEAT20 G1では0.56以下。HEAT20 G2では0.46以下となっています。
現在ではZEH対応のUA値0.6以下を高断熱住宅といえることができるでしょう。ただ、今後も省エネ化は進んでいきますから、G2グレード0.46以下が将来の高断熱住宅の基準になるでしょう。
2.高気密・高断熱住宅のメリット
2-1 夏涼しく、冬暖かい
夏の高い外気温が室内に入りにくくなるため、エアコンが効きやすく涼しさを保ちやすくなります。冬は室内の暖かい空気が外に逃げにくいので、室温を一定に保ちやすくなります。
高気密高断熱住宅は、夏の冷房設定温度をそれほど低くする必要はありません。冬も暖房の設定温度を高く設定しなくても十分室温を高めることができます。
2-2 光熱費削減・省エネ
高気密高断熱住宅は、夏場は外の暑い熱が室内に入りにくくなりますので、冷房温度を低く設定する必要がありません。冬場も室内の暖かい熱が外へ逃げにくくなるため、暖房温度を高く設定する必要がありません。エアコンを使用しても最低限の稼働で十分効果があるため、光熱費の削減になります。
2-3 ヒートショックの予防
ヒートショックとは、急激な温度の変化で身体がダメージを受けることです。家庭内事故は交通事故よりも多く、その原因のほとんどはヒートショックが原因である可能性があります。特に冬場のトイレや浴室は寒くなりがちです。28℃の暖かいリビングから約5℃の寒いトイレや浴室に行くことで血管が縮み、血圧が上がります。また入浴の場合は、一気に43℃のお湯に浸かることで今度は急激に血圧が下がります。急激に血圧が下がることで意識を失い、お風呂で溺死してしまうこともあります。急激な血圧の上下によって心筋梗塞や脳卒中の原因にもなります。
高気密高断熱住宅では、室内間の温度差を少なくすることができますので、ヒートショックによる事故を予防することができます。
2-4 遮音性がよい
高気密高断熱住宅は、隙間が少ないのと、断熱材が防音材の役割を果たすため音漏れがしにくく、外から入ってくる音も少なくなります。
お子様のはしゃぐ声が隣近所に迷惑にならないか心配。楽器の練習をしたい。主要道路のすぐ近くで騒音が心配という方も大きな音が気になりにくくなるため快適に過ごせます。
2-5 耐久性が高い
建物内で結露が頻発し、それを放置しているとカビが生える原因になります。その結果木材が腐ったりして、建物の耐久性を悪くしてしまいます。カビが生えるということは、ダニの繁殖も懸念されます。カビやダニが増えることでシックハウス症候群になったり、アレルギーがでたり、アトピー性皮膚炎になったりといった、健康被害のリスクも高まります。
高気密高断熱住宅では、気密が高いため計画換気が理想通りになるため建物内部の結露を防ぎます。結露を防ぐことにより建物の耐久性が高くなるのです。
3.高気密・高断熱住宅のデメリット
3-1 建築コストが高い
高気密高断熱住宅は、断熱性を高めるために高性能な断熱材を使用します。もちろん断熱性能の高い窓や玄関ドアなどを使用します。気密性を高めるために作業量も多くなりますので、その分の作業費も上がることになります。気密の数値は現場で測定しないと出ませんので、数値を出そうと思うと気密試験をしなければなりません。気密試験も当然料金がかかります。
高気密高断熱住宅は、その性能が高くなるほど建築コストも高くなるといえます。
3-2 窓や玄関も高断熱のものに
断熱性能を高めるために、床下や壁の中、天井などの断熱材を高性能なものにすることが大事です。しかしそれよりも断熱性能に差がでるのが窓や玄関ドア。窓などの開口部からの熱の移動が多くなるため、断熱性能の高いサッシを使用する必要があるのです。
窓や玄関の断熱性能もしっかりと確認したいところです。
3-3 石油暖房機が使えない
石油ファンヒーターなど、冬の生活に欠かせないという方もおみえかと思います。石油ファンヒーターなどの石油暖房機は燃焼するときに一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気などを放出します。一酸化炭素や二酸化炭素などは24時間換気以上の換気を必要としますので、通常の換気以上の換気が必要になります。(1時間に一回窓を開けて換気するなど)寒い冬に窓を開けて換気することは室内温度を下げることになります。高気密高断熱住宅では、エアコンだけで十分暖かくなります。ですので、換気のために室内温度をさげなければならない石油暖房機の使用は本末転倒になります。
次の項目で出てくる「乾燥」について、石油暖房機は水蒸気を出すからよいように思いますが、快適な湿度以上の水蒸気が出るため、やはり窓を開けての換気になります。
3-4 乾燥する
日本の冬は湿度が低く、乾燥します。高気密高断熱住宅は温度を一定に保ちやすくなりますので、相対的に湿度は下がってしまいます。これは高気密高断熱住宅ではない住宅でも同じことなのですが。
前項の石油暖房機を利用しての石油ストーブの上にやかんを置いて・・・これは湿度を上げるのに良さそうに思えますが、湿度が想定よりも上がりすぎてしまうため結露の原因になるので、絶対にやめてください。
乾燥対策としては、洗濯ものを室内干しにする、加湿器を利用するなどで対応してください。
4.高気密・高断熱住宅を建てる際の注意点
4-1 換気システムの選択
高気密高断熱住宅は、それだけではただの密閉された断熱の箱になってしまいます。そこで大事になるのが換気になります。
現在の建築基準法では24時間換気が義務付けられており、居室では毎時0.5回以上換気することとされています。
換気の方法は主に、
・第一種換気
・第三種換気
に分類されます。
第一種換気は、給気、排気ともに機械換気で行い強制的に換気します。空気の循環を管理する上で最も安定しています。第三種換気は、排気を強制的に機械で行い、給気は自然に任せます。最も一般的に使われている換気方法です。
どちらを選ぶにせよ、室内温度・湿度・換気のバランスを考えた換気システムを採用しましょう。
4-2 冬の暖房機器の選択
前にも出てきましたが、石油暖房機を使用する場合は特に注意が必要になります。石油暖房機は使用すると、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気を出します。そのほかにも有害な燃焼ガスが発生するため、1時間に1回程度、窓を開けての換気が必要になります。
高気密高断熱住宅では、すきま風がないため、外気は計画換気以上になかなか入りません。石油暖房機の燃焼には酸素が必要で、その酸素が不足すると不完全燃焼を起こし、一酸化炭素中毒になる危険性が高まります。24時間換気の換気量では石油暖房機の給気・排気の量を確保できないこと、窓を開けて換気することでせっかく暖まった室内の温度を外に逃がしてしまうことになり、高気密高断熱住宅の利点が生かせなくなります。
ハウスメーカーや断熱材メーカーの中には石油暖房機の使用を禁止すると明言するところもあります。せっかくの健康住宅に住むのに危険な暖房器具を利用することはありません。エアコンか電気ストーブを利用することをおすすめします。
5.まとめ
改正建築物省エネ法が令和3年度も更新されました。今後も高気密高断熱住宅の需要は高まっていくと考えられます。高気密高断熱住宅はこれからの日本の住宅のスタンダードになっていくことは間違いありません。今後の快適な暮らしをするために、検討するに値するものだと思います。
現在は高気密高断熱住宅をはじめとする省エネ住宅、ZEH住宅、長期優良住宅などは税制面でも優遇されています。補助金などもあり国は省エネ住宅を推進しています。初期費用は多くかかるかもしれませんが、そこは補助金などを活用し、家を建てたあとの光熱費の安さを傍受するのもこれからのライフスタイルなのかもしれません。
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