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住宅ローンの事前審査の基準とポイントを解説します

住宅を建てるときにほとんどの方が利用する「住宅ローン」。しかし住宅ローンは誰でも利用できるわけではありません。住宅ローンを利用するには、金融機関の事前審査を通らなければなりません。
この記事では、住宅ローンの事前審査で金融機関が何を見て判断しているのかを解説いたします。

 

もくじ

 

1.事前審査のポイント

1-1 申込者の年収

1-1-1 勤続年数(1年以上理想は3年以上)
1-1-2 雇用形態

1-2 年齢

1-3 健康状態(3大疾病)

1-4 返済負担率(年収400万円基準)

1-5 既存債務

1-5-1 車のローン

1-5-2 クレジットカード

1-5-3 携帯電話

1-6 家族構成

1-7 不動産担保評価

2.事前審査でやってはいけないこと

2-1 何も考えずに事前審査は行わない

2-2 いきなり複数の金融機関で事前審査を行う

3.事前審査で落ちた場合に確認すること

3-1 自分の信用情報をチェックする

3-2 信用情報をチェックしたらすること

4.どの金融機関が借りやすいのか?

4-1 フラット35

4-2 JAバンク(農協)

4-3 ろうきん(労働金庫)

4-4 信用金庫

4-5 地銀

4-6 メガバンク

5.まとめ

1.事前審査のポイント

1-1 申込者の年収

住宅ローンを借りる大前提として、
安定的かつ継続的な収入があること
とされています。
住宅ローンは数あるローンの中でも、金利が一番低く高額なローンとなるため他のローンと比べて審査は一番厳しくなります。そのため、一番の審査項目が申込者の「年収」になります。基本的には年末にもらう「源泉徴収票」が3年分あれば大丈夫でしょう。

 

1-1-1 勤続年数(1年以上理想は3年以上)

年収に付随して見られる項目として、勤続年数があります。上記の通り、「安定的かつ継続的な収入があること」の前提として勤続年数が加味されます。3年以上勤務していればこの項目についていえばどこの金融機関でもOKです。勤続年数が3年未満の場合ですと金融機関によっては不利になり、最低でも1年間勤務して、1年分(1月~12月)の源泉徴収票があることが望ましいです。勤続年数が1年未満の場合でも受け付ける金融機関はありますが、できれば1年間以上、3年以上が有利になります

 

1-1-2 雇用形態

雇用形態には、正社員、派遣社員、契約社員などがあります。どの雇用形態でも住宅ローンを借りることはできますが、正社員のほうが、平均給与も高く離職率も低いため給与が安定しているとみなされ有利になります。これに関連して、公務員や上場企業の正社員は安定していると判断されます。
自営業者やフリーランスの場合は、確定申告書で判断されます。これも源泉徴収票と同じく3年間あるとよいでしょう。ただし自営業者は会社員よりも厳しく判断されます。自営業者は税金対策として所得を低くされる方もいますが、住宅ローンを借りるのであれば3年間はしっかりとした所得がないとそもそも住宅ローンを借りるだけの収入がないと判断されてしまいます。中小企業の経営者も同じことで、自分の役員報酬とは別に会社の決算書を要求される場合があります。

1-2 年齢

住宅ローンは返済が長期にわたりますから、年齢は審査で重要になってきます。住宅ローンの完済時の年齢は満80歳を超えないこと。通常住宅ローンは35年ローンにすることが多いのですが、45歳を超えると完済時の80歳までの年数が35年を下回ることになります。住宅ローン自体は30年でも組むことはできますが、この場合はあとで出てきます、「返済負担率」に関わってきますので注意が必要です。

1-3 健康状態(3大疾病)

ほとんどの住宅ローン商品は、借入条件として、「団体信用生命保険」に加入することになります。団体信用生命保険とは、住宅ローン特有の生命保険ですから、健康状態がよくないと加入できません。このためがんや心臓等の疾患がある場合、団体信用生命保険に加入できない場合があります。その場合は団体信用生命保険に加入しなくても借りられる住宅ローンにするしかありません。

1-4 返済負担率(年収400万円基準)

返済負担率とは、年収に占める年間のローン返済額の割合のことをいいます。返済負担率は年収による基準があり、フラット35の場合、年収400万円未満の場合、返済負担率は30%となり年間返済額の上限は120万円(10万円/月)となります。年収が400万円以上の場合、返済負担率は35%となり年間返済額の上限は140万円(約11.7万円/月)となります。
民間の金融機関の場合は、年収100-300万円20%、300-450万円30%、450-600万円35%、600万円以上40%という基準があります。
返済負担率は、住宅ローンだけでなく車のローンやクレジットのリボ払い、消費者金融の借入などすべての負債も含まれますので、注意が必要です。

1-5 既存債務

既存債務があると上記の返済負担率に関わってきますので、できれば既存債務はないに越したことはありません
既存債務の中の主なものをご紹介します。
・車のローン
・クレジットカードのリボ払い、キャッシング
・携帯電話の端末代金の分割払い
・テレビショッピングの分割払い
・消費者金融の借入
・銀行のカードキャッシング
これらのうち代表的なものが以下になります。

 

1-5-1 車のローン

若い方で、車のローンがある方は住宅ローンが通らないと思っておいてもよいくらいです。車のローンは返済負担率の計算が割高になっていますので、車のローンがあるとかなり不利になってしまうからです。
例えば500万円の新車を7年ローンで購入しているとします。あと残債は100万円ほど。残債は100万円ですが、返済負担率の計算は500万円で計算します。カーローンの返済計算は一律5年6%で計算されますので、月々の返済額は96,664円と計算されてしまいます。これではよほど年収が高くないと現状では住宅ローンは組むことはできません。

 

1-5-2 クレジットカード

クレジットカードでお買い物する分には何も問題ありません。ただ、上記にも書きました、リボ払い、キャッシングなどがある場合はすべて借入負債扱いになります。またもっているカードや限度額にも注意が必要です。クレジットカードやキャッシングカードが合計5枚あり、限度額合計が500万円の場合、キャッシングの借入残高が50万円だったとしても最大で500万円の借入残高があるとみなされてしまう場合があります

 

1-5-3 携帯電話

最近の携帯電話(スマホ)はアイフォンを中心に端末価格が高額になっており、端末代金を分割で購入される方が多くなっています。この分割購入の代金の支払い忘れがあると、信用情報に延滞情報として掲載されてしまいます
この携帯端末の支払い忘れが現在住宅ローンの事前審査落ちの第一位となっていますので、注意が必要です。あまりにも数が多いため、1回まではOK、2回まではOK、1回でもNGという明確な基準を設けている金融機関もあります。ただこの情報は非公開ですので、支払い忘れはないに越したことはないでしょう。

 

これらの既存債務は住宅ローンを借りる上で懸念材料となることが多いことから、住宅ローンの利用条件として、これらの既存債務の一括返済を求められるケースがあります。

1-6 家族構成

独身よりも成人の同居人がいることで審査の印象がよくなるといわれています。主債務者が支払いが困難になったとき、成人の同居人が支払ってくれる可能性が高まるからです。
逆に子どもが多い家族の同居は、生活費がかかるため人数分の食費・教育費が加味されます
ただ、この項目は年収や既存債務の項目に比べると影響は少ないと思われます。

1-7 不動産担保評価

年収ベースの評価とはまた違った評価項目で、不動産担保評価があります。住宅ローンを借りる際は、土地・建物の不動産を担保にします。万が一住宅ローンの返済がされない場合、金融機関はこの不動産で債務を回収するのです。そのため土地・建物に住宅ローンに見合うだけの担保価値があるかどうかが審査されます。

2.事前審査でやってはいけないこと

今までお客様と対応してきた中で、知らずに知らずのうちに自分に不利になってしまう行動をしてしまう人がいます。これは知らないことによる行動ですが、知っていれば回避することができますので、ぜひ読んでいただきたいと思います。

2-1 何も考えずに事前審査は行わない

よくある行動パターンは、住宅展示場へ行き大手ハウスメーカーから見積書をもらい、「銀行へ行って事前審査を受けてきて下さい」と言われ何も考えずに銀行へ行って事前審査をしてしまうパターン。その大手ハウスメーカーで建てるつもりで、一発で住宅ローンに通ればそのままその大手ハウスメーカーで建築するならよいのですが、いろいろと検討したいという時期でしたら簡単に事前審査は行わないほうがよいでしょう
事前審査は一回でも行うと個人信用情報に記録が残ります。これは事前審査に通っても、通らなくても載ってしまいます。通って載るのならまだよいのですが、通らなかった場合バツが記録として残ってしまうのです

2-2 いきなり複数の金融機関で事前審査を行う

そのあとのよくないパターンは、大手ハウスメーカーの見積りとA銀行の事前審査は落ちた。では中小S工務店の見積りでB銀行の事前審査に行く。また落ちる。もう少し安い中小Y工務店の見積りでC銀行の事前審査を依頼する。また落ちる。これを繰り返すと上記のように個人信用情報にどんどんバツが蓄積されていってしまいます。このバツが蓄積された個人信用情報を事前審査する金融機関がみると「これだけ事前審査に落ちているから、慎重に審査しよう」となります。
事前審査に落ちるには落ちる理由があります。そこを改善することなく、下手な鉄砲を数打ったとしても事前審査は通りません

3.事前審査で落ちた場合に確認すること

住宅ローンの事前審査に通らなかった場合、必ずどこかに理由があります。しかし金融機関は事前審査の結果を伝えてはくれますが、通らなかった場合の理由については告知する義務はありません。このため、一度事前審査が通らなかった場合は、その原因を突きとめなくては住宅ローンが通ることはないのです。
住宅ローンが通らない第一位の原因は、携帯電話などの既存債務になります。身に覚えがなくても過去に支払い忘れがあったりしますので、きちんと確認する必要があります。
自分の個人信用情報は、本人であれば確認することができます。
下記の個人信用情報を取り寄せてチェックしましょう。

3-1 自分の信用情報をチェックする

日本には、3つの情報センターがあります。スマホから請求ができますので、手続きは簡単です。運転免許証などの身分証明書が必要になります。手数料は各1,000円です。

KSC 全国銀行個人情報センター
JICC 日本信用情報機構
CIC クレジットインフォメーションセンター

 

信用情報は必ずこの3つの情報センターすべてから取り寄せて下さい。一つでも欠けるとどこに原因があるのか特定できません

3-2 信用情報をチェックしたらすること

個人信用情報を手に入れたら、すべてチェックします。自分の今までの金融の履歴ですから、何かしら覚えがあるはずです。ここには既存債務の債務額・残債額・返済履歴等が記載されています。既存債務の残高が問題であったり、返済履歴に傷がないか確認しましょう。ここでは使っていないけど、作ったことのあるクレジットカードやカードローンの履歴が記載されます。使わないカードはこの際解約するとよいでしょう。
個人情報を取り寄せて自分で見てみても、よくわからないという方は、頼もうと思っている工務店の担当者か事前審査を検討している金融機関の担当者にすべての資料をもっていって相談しましょう

4.どの金融機関が借りやすいのか?

住宅ローンのアドバイスをしていると、「どの住宅ローンがおすすめですか?」と聞かれることがよくあります。おすすめしたい住宅ローンはあるけれど、それが全員に当てはまることは残念ながらありません。それぞれの金融機関で取り扱い金利や、保証料、手数料などが違うため検討する場合は一つ一つの項目を確認することが重要です。
下記に主な住宅ローンを取り扱う金融機関についてまとめました。

4-1 フラット35

民間金融機関と住宅金融支援機構が提携している住宅ローン商品で、名前の通り全期間固定金利が最大の特徴といえます。民間金融機関では借りにくい、自営業者や個人事業主、転職して間もない方はフラット35がおすすめです。年収が分かる確定申告書や源泉徴収票は1年分あればよく、窓口によっては給与明細でもOKです。団体信用生命保険への加入は任意であるため、健康に不安のある方もフラット35なら住宅ローンを利用できます。最近では地方自治体と連携した「地域連携型」、長期優良住宅などの「維持保全メニュー」など金利優遇の制度も充実しています。

4-2 JAバンク(農協)

JAバンクは、農業協同組合の組合員にとってなじみのある金融機関です。実家が農家や兼業農家である場合などは利用しやすいかもしれません。ただ、一般の方でも住宅ローンを利用することができます。一般の銀行と違い監督官庁が農林水産省ですので、住宅ローンの審査基準も銀行とは異なります年収が低くても住宅ローンに申し込めることや、条件を満たすと金利が優遇されたりします。あまり関係ないかもしれませんが、住宅ローンを実行するとお米がもらえる特典があるJAもあります。

4-3 ろうきん(労働金庫)

ろうきん(労働金庫)はあまり耳慣れない金融機関かもしれませんが、住宅ローンも取り扱っています。
特に労働組合がある会社にお勤めの方や、公務員の方、生活協同組合の組合員であれば保証料が安くなったり、条件によって金利の引き下げもあります窓口での一部繰り上げ返済手数料が無料だったり、年収は150万円からとなっていますので、条件が明確です。頭金を用意せずフルローンにも対応しています。
労働組合がない会社にお勤めの方でも利用はできますが、事務手数料が高くなります。

4-4 信用金庫

信用金庫は金融機関ですが、その特性上銀行と一緒ではありません。信用金庫は地域密着のため地元の信用金庫に相談をするとよいでしょう。事前審査をする前にじっくりと相談することができますので、地銀やメガバンクと違い親身になってもらえます。地銀・メガバンクより柔軟に審査をしてくれますし、住宅ローンに不利な自営業者にも的確なアドバイスをしてくれます。自営業者の場合は日ごろから取引などで信用金庫とパイプをもっておくのがよいでしょう。

4-5 地銀

このあたりですと、大垣共立銀行、十六銀行などが該当します。一言でいってしまうと信用金庫とメガバンクの間の対応というのが一番しっくりきます。メガバンクよりも柔軟で臨機応変に対応してもらえます。住宅展示場にある大手ハウスメーカーが紹介する金融機関は地銀が多く、提携しているところもあります。提携しているということは多少の融通が効くこともあります。自分が勤めている会社の取引金融機関である場合、会社と一緒に交渉してもらうという方法もあります。

4-6 メガバンク

メガバンクは地方都市には数が少なく、相談できる窓口が少ないです。金利もそれほど低くなく、保証料もしっかりかかります。相談することはできますが、金利交渉など信用金庫などと比べるとかなりドライな印象です。組織がしっかりしていますので、返済負担率などは型式通りの結果となることが多く、臨機応変に対応してもらえることは期待できません。年収などに関わる審査は当然として、土地の価格が高くなる都市圏での住宅ローンはメガバンクが得意とする所でしょう。

5.まとめ

住宅ローンの事前審査は、およそ10%の人が通らないと言われています。事前審査に通らない理由は上記に書いた通りですが、通らなかった人全員が絶対に住宅ローンが組めないかというとそんなことはありません
借入総額を見直したり、個人情報を取り寄せて原因を見つけ対策する。自分に合った金融機関で事前審査する。どうしても足りない場合は夫婦のペアローンなども考慮する。
これらの方法を組み合わせれば、住宅ローンを組むことができます。世の中の住宅ローンが組めず住宅取得を諦めたという多くの人は、このような知識を知らなかっただけなのです。
年収はきちんとある場合、住宅ローンの事前審査を通す方法は必ずあります。住宅取得が夢であるご家族には諦めずに信頼できる方に相談していただければと思います。

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