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『省エネ住宅』って何?ZEH?HEAT20?住宅の省エネ基準を解説します!

住宅性能のひとつに、「省エネ性能」があります。しかしひとことで省エネ性能といっても何をさしているのか分からない人も多いのではないでしょうか。省エネ性能に関連する用語として、「高気密高断熱」「ZEH」「HEAT20」などたくさんのワードがあるのですが、何となく聞いたことがあるけど詳しくは分からない・・・。そんなことはないでしょうか。そこでこの記事では省エネ住宅について分かりやすく解説します。

もくじ

1.省エネ用語解説

1-1 UA値

1-2 C値

1-3 BEI

2.国が定める「省エネ基準」

2-1 省エネ基準の歴史

2-2 地域区分

2-2-1 私たちの地域区分は

2-3 住宅性能表示制度と省エネ基準の関係

2-3-1 外皮性能基準(6地域)

2-3-2 一次エネルギー消費量(6地域)

3.ZEHとは?

3-1 ZEHの判断基準

3-2 ZEHの地域区分別基準UA値

3-3 Nearly ZEH

3-4 ZEH+

3-5 次世代ZEH+

4.HEAT20とは?

4-1 HEAT20の断熱基準

5.C値に国の基準はない

6.まとめ

6-1 断熱基準一覧 (UA値)

1.省エネ用語解説

1-1 UA値

UA値とは「外皮平均熱貫流率」のことで、どのくらいの熱量が家の外に逃げやすいかを表す数値です。

住宅の内部から床・外壁・屋根(天井)・開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値です。

つまり、熱損失の合計を外皮面積で除した値で、値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高く、省エネルギー性能が高いことを示します。

1-2 C値

C値とは、「隙間相当面積」のことです。住宅の気密性能を表す数値のことです。 建物全体にある隙間面積(㎠)を延床面積(㎡)で割った数値で表します。値が小さいほど隙間が少ないことを表しています。

 

 

リクシル 住まいスタジオでの想定UA値・C値

昔の家

(昭和55年省エネ基準)

今の家

(長期優良住宅仕様)

これからの家

(HEAT20 G2仕様)

UA値 1.43 0.85 0.45
C値 14.65 4.33 0.7

リクシル住まいスタジオ

1-3 BEI

BEIとは、Building Energy Indexの略で、住宅・建築物の一次エネルギー消費量の基準の水準のことです。

BEIは、実際に建てる建物の設計一次エネルギー消費量を、地域や建物用途、使用条件などで定められている基準一次エネルギー消費量で除した値で評価し、新築される住宅・建築物の一次エネルギー消費量基準に適合となる水準は、BEI≦1.0となります。

BEI=設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量
新築される建築物においては、設計一次エネルギー消費量が基準一次エネルギー消費量以下であれば省エネ基準に適合しているということになります。省エネ基準については後ほど表でご確認ください。

2.国が定める「省エネ基準」

昭和55年に制定された、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」により住宅の省エネ基準ができました。

その後、外皮といわれる、外壁・屋根・天井・床・窓などの住宅を包む部分について、断熱性能を高めるようになってきました。さらに、平成25(2013)年に省エネ基準が改正されました。外皮だけでなく、冷暖房設備や給湯器、照明など住宅全体で消費するエネルギーの量を総合的に評価できるように「一次エネルギー消費量」の基準が追加されました。

平成11年には「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の制定され、「住宅性能表示制度」ができました。住宅の性能を統一基準で評価します。10分野(新築の場合)があり、その1分野に省エネ性能があります。

平成25年の改正に応じて、外皮の評価による「断熱等性能等級」と一次エネルギー消費量の評価による「一次エネルギー消費量等級」に分かれるようになりました。

2-1 省エネ基準の歴史

省エネ基準は、昭和55(1980)年にはじめて制定されました。以降、平成4(1992)年、平成11(1999)年に改正され、その内容を強化してきました。昭和55年の省エネ基準を「旧省エネ基準」、平成4年を「新省エネ基準」、平成11年を「次世代省エネ基準」といった呼び方をしています。

2-2 地域区分

平成21年改正版の次世代省エネルギー基準では、地域ごとに断熱性能の要求が違い、Ⅰ地域からⅥ地域までの6つの地域区分に分けられていました。地域区分は、市区町村単位で決められています。平成27年4月1日に完全施行となる平成25年改正版の次世代省エネルギー基準では、I地域とIV地域がそれぞれ2つに分けられ、1地域から8地域までの8つの地域区分に細分化されました。

 

新地域区分

 

詳しい地域区分はこちら → 国土交通省地域区分新旧表

2-2-1 私たちの地域区分は

岐阜県西濃地域

5地域 大垣市(旧上石津町)・関ケ原町
6地域 大垣市(旧大垣市)・大垣市(旧墨俣町)・養老町・垂井町・神戸町・輪之内町・安八町・揖斐川町・大野町・池田町

2-3 住宅性能表示制度と省エネ基準の関係

省エネ基準と住宅性能表示制度の等級との関係性を表にしました。
住宅の省エネ性能を知りたい場合は、どの時点の省エネ基準に適合しているのか、住宅性能表示制度を利用した評価書を取得している場合はどんな等級になっているかの目安になればと思います。

 

2-3-1 外皮性能基準(6地域)

住宅性能表示制度 省エネ基準
〈断熱等性能等級〉 〈外皮性能〉 要求値
等級7(新設) 2022年10月1日~ UA値≦0.26
等級6(新設) 2022年10月1日~ UA値≦0.46
等級5 2022年4月1日~ UA値≦0.60
等級4 平成11年

(次世代省エネ基準)

UA値≦0.87
等級3 平成4年(新省エネ基準) UA値≦1.54
等級2 昭和55年(旧省エネ基準) UA値≦1.67
等級1 昭和55年よりも前

 

2-3-2 一次エネルギー消費量(6地域)

住宅性能表示制度 省エネ基準
〈断熱等性能等級〉 〈一次エネルギー消費量〉 要求値
等級6(新設) 2022年4月1日~ BEI≦0.8

(省エネ基準▲20%)

等級5 BEI≦0.9

(省エネ基準▲10%)

等級4 平成25年一次エネルギー

消費量基準

BEI≦1.08

(省エネ基準)

等級1

3.ZEHとは?

ZEHとは、net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味になります。つまり、家庭で使用するエネルギーと、太陽光発電などで創るエネルギーをバランスして、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家ということです。

3-1 ZEHの判断基準

(1)建物本体の性能(断熱、日射遮蔽・取得、気密、結露を防げるかなど)に留意されていること。

ZEH定義に基づく外皮基準値(UA値)は、0.6相当以下(6地域)です。
(2)基準のエネルギー消費量から20%以上のエネルギー消費量が削減されていること。
(3)再生可能エネルギー(太陽光発電など)が導入されていること。
(4)再生可能エネルギーと差し引きして、基準一次エネルギー消費量から100%の一次エネルギー消費量が削減されていること。

3-2 ZEHの地域区分別基準UA値

地域区分 1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
H25基準 0.46 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
ZEH 0.4以下 0.5以下 0.6以下

3-3 Nearly ZEH

都会など太陽光発電システムが十分に設置できない住宅に配慮された基準です。

断熱性基準と省エネによる消費量削減の基準はZEHと同じになります。日照時間や太陽光発電システムの設置面積が限られる事を考慮して年間の一次エネルギー消費量の基準が異なっています。

具体的にはZEHが年間の一次エネルギー消費量が100%以上に対して、Nearly ZEHは75%以上100%未満という基準になります。

3-4 ZEH+

現行のZEHよりも省エネをさらに深堀りするとともに、設備のより効率的な運用などを備えたもの。太陽光発電システムの自家消費率を引き上げ、FITからの自立を目指すのが目的とされています。

  1. 一次エネルギー消費量を、省エネ基準から25%以上削減する。
  2. 以下のうち2つ以上を導入した住宅
    1. 更なる高断熱外皮(HEAT20のG2レベル)
    2. 高度エネルギーマネジメント(HEMSの導入)
    3. 電気自動車(PHV車含む)を活用した自家消費の拡大措置のための充電設備又は充放電設備

3-5 次世代ZEH+

ZEH+の要件に加え追加選択要件を1つ以上導入することによって、さらなる再生可能エネルギーの自家消費の拡大をめざしたZEHです。

次世代ZEH+の要件

  1. ZEH+に係る要件を満たし、かつ
  2. 以下いずれか1つ以上を導入した住宅
    1. 蓄電システム
    2. 燃料電池
    3. V2H充電設備(充放電設備)
    4. 太陽熱利用温水システム
    5. 太陽光発電システム10kW以上

4.HEAT20とは?

HEAT20とは、一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称になります。HEAT20は住宅の更なる省エネルギー化をはかる上で、断熱性能に着目した組織です。断熱性能の向上と居住者の健康維持・快適性向上を目的として活動しています。

省エネ性能基準やZEH基準よりも厳しい基準を設けていますので、最近の断熱・省エネ性能の基準として一般化しています

20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会

G3の基準は2019年6月に定められました。

4-1 HEAT20の断熱基準

断熱基準 地域区分
HEAT20 G1 0.34 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56
HEAT20 G2 0.28 0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 0.46
HEAT20 G3 0.20 0.20 0.20 0.23 0.23 0.26 0.26

5.C値に国の基準はない

気密性能を数値化したC値ですが、現在国の基準はありません

1999年(平成11年基準)に次世代省エネ基準が創設され、断熱性能を表すQ値(当時)と気密性能を表すC値が設定されました。寒冷地でC値2.0、その他の地域で5.0という基準がでした。

ところが、2009年にこの気密性能の規定は削除されました。平成25年基準でも気密性能に関する基準は記載されませんでした。気密性能は現場での測定によってしか数値がでません。書類をチェックする役所は図面で確認できないと困る。現場の大工さんは忙しいのに計測なんてやってられない。これらの理由により現在はC値の基準がありません。

しかし省エネ住宅にとってこのC値という数字はすごく大事な数値になりますので、本当に快適な住宅に住みたいのであればC値は確認したいところです。

6.まとめ

省エネ住宅は、消費エネルギーを抑えて快適に暮らせる住宅です。

光熱費を抑え、一年中室内の温度を一定に保って、結露やヒートショックを軽減できる省エネ住宅。

しかし省エネ住宅といっても様々な基準があることがお分かりいただけたと思います。現在の基準では地域区分によるUA値がひとつの基準になっています。ただ、このUA値の数値が小さければ小さいほど断熱性能が高くなり省エネ性能も上がることが分かります。しかし断熱性能を上げれば上げるほど住宅の価格も上昇することも確かなことです。住宅を建てる地域区分とUA値を確認し、最適な断熱性能を選択してください。

また、基準にはないですが、C値も省エネ性能にかなり影響を与えることを理解して、断熱性能と気密性能の両方を確認して省エネ住宅を建ててください。

6-1 断熱基準一覧 (UA値)

断熱基準 地域区分
断熱等級4 0.46 0.46 0.56 0.56 0.75 0.87 0.87
ZEH基準 0.40 0.40 0.50 0.60 0.60 0.60 0.60
HEAT20

G1

0.34 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56
HEAT20

G2

0.28 0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 0.46
HEAT20

G3

0.20 0.20 0.20 0.23 0.23 0.26 0.26

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