住宅で使われる断熱材の種類と特徴
2022年05月07日
住宅を建てる際に、確認したいポイントの一つとして断熱材があります。住宅で使用される断熱材には様々な種類があり、会社によって使用される断熱材は当然違います。そこで今回は、断熱材の種類と特徴についてお伝えしたいと思います。
高気密高断熱のメリットデメリットについては↓の記事で。
「高気密・高断熱住宅とは?メリット・デメリットを解説します!」
もくじ
1.断熱工法の種類
木造住宅の断熱工法は、大きく分けて充填断熱と外張断熱があります。
一般的に、充填断熱が内断熱と呼ばれ、外張断熱が外断熱と呼ばれています。
1-1 充填断熱とは
充填断熱工法とは、木造の柱と柱の間などにボード状のものやシート状の断熱材を入れたり、液状の断熱材を吹き付け充填する断熱方法になります。
現在の木造住宅現場において広く採用されている工法です。
外壁と内壁の間の空間を利用することで、断熱用のスペースを作る必要がありません。外張断熱工法よりもコストがかからないことが多いです。
断熱材と柱などの間に隙間ができやすいため、結露防止フィルムなどによる防湿施工が必要になるなど、 高い施工技術が必要になります。
1-2 外張断熱とは
外張断熱工法は、木造住宅の柱など構造材の外側に断熱材を張り付ける工法です。
外壁と内壁の間に空間が残りますので、配線や配管などのスペースの確保がしやすいのが特徴です。 充填断熱と異なり、柱などを避ける必要がないため、隙間ができにくく気密性や防湿性が高まるメリットもあります。
断熱材の重みで外壁が垂れ下がる恐れがあるため、あまり断熱材を厚く出来ないデメリットがあります。地震などが起こった場合、外壁材の緩みや変形・ 落下などが起こるデメリットもあります。
施工工程が増えますので、充填断熱に比べコストが高くなりがちです。
1-3 付加断熱とは
充填断熱工法と外張断熱を両方施行する断熱方法です。最も断熱材を厚くできますので、断熱効果は一番高い断熱工法といえます。 お分かりかと思いますが、一番コストが高くなります。
2.断熱材の種類
断熱材の種類として、
・無機繊維系断熱材
・木質繊維系断熱材
・天然素材系断熱材
・発泡プラスチック系断熱材
があります。
2-1 無機繊維系断熱材の特徴
無機繊維系断熱材は、ふわふわな綿のような材質で、細い繊維状の素材の中に空気を閉じ込めることで断熱します。鉱物などを原料にしており、取り扱いや施工が比較的容易であることから、日本で最も普及している断熱材です。
鉱物(ガラス)を細い繊維状に加工した断熱材。
最も広く普及しており、断熱材の中でも安価であるといえます。 素材がガラス繊維ですので、シロアリなどの害虫被害や火災に強いというメリットがあります。防音効果もあります。湿気に弱いというデメリットがあるため、防湿・ 結露対策が必要になります。
主なグラスウール材
岩石やスラグといった鉱物を原料としている断熱材。グラスウールと性質がよく似ていますが、グラスウールよりも価格は少し高めです。日本ではロックウールよりもグラスウールの方が多く採用されています。
主なロックウール材
2-2 木質繊維系断熱材の特徴
木質繊維系断熱材は、木などの天然素材で作られています。吸音性や吸放湿性において高い効果を発揮します。 グラスウールよりも値段は高くなります。
セルロースファイバーは、新聞紙などの古紙が原料で作られています。環境に優しい断熱材といえます。原料にホウ酸や難燃剤などの薬剤が入っているため、 耐火性や防虫効果に優れています。吸音性や防音性が高いことも特徴のひとつです。セルロースファイバーの施工は専門会社に依頼する必要があります。
日本セルロースファイバー工業会
インシュレーションボードは、木材を細かく粉砕し、撥水加工をしたボード状の断熱材です。 吸音効果や調湿性に優れています。しかし、ホウ酸などの薬剤が入っていないため、シロアリ被害に遭う場合があることや熱伝導率の低さのため、現状では断熱材として使用されることはほとんどありません。
日本繊維板工業会
https://jfpma.jp/seihin/seniban/ib-index.html
2-3 天然素材系断熱材
自然生まれの天然素材を使用した断熱材。
主流ではありませんが、健康住宅に使用されたり、健康に気づかう人に支持されている素材です。
その名の通り羊の毛を使用しています。 湿気を吸ったり吐いたりする調湿効果があります。 しかし、熱伝導率ではそれほど優れていないため、他の断熱材よりも利用されることはあまりありません。 原料のほとんどは、ニュージーランドなどから輸入されています。そのためコストがかかります。
主な羊毛材
ワインの栓などの製造で出たコルク材の端材を利用して炭化させた断熱材です。調湿効果や、吸音性に優れています。原料となるコルクには、 自然の防虫効果があります。端材を利用する環境に優しい素材ですが、価格は高くなりがちです。
主な炭化コルク材
2-4 発泡プラスチック系断熱材
発泡プラスチック系断熱材は、無数の気泡を含むプラスチック素材を用いた断熱材です。
優れた断熱性や施工のしやすさなどで近年注目を集めています。
ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えた断熱材です。
ボード状の断熱材や、施工箇所に直接吹き付ける施工方法もあります。この直接吹き付ける施工方法の事を一般的に吹き付け断熱と呼ばれています。
近年この吹き付け断熱を採用している会社が多くなっています。
主な硬質ウレタンフォーム ボード
主な硬質ウレタンフォーム 拭き付け
フェノール樹脂に、発泡剤や硬化剤を加え、ボード状にした断熱材です。
熱を帯びると硬化する特徴があるので、非常に燃えにくく、有毒ガスが発生する心配がありません。 熱伝導率が低く、耐久性にも優れているため、高い断熱効果を長期間にわたって維持できる断熱材です。他の断熱材と比べて価格がかなり高いです。
主なフェノールフォーム
ビーズ状にしたポリスチレン樹脂を発泡させた断熱材です。いわゆる発泡スチロールと同じ素材と考えていただいて差し障りありません。柔らかく軽量で加工がしやすく、水を吸わないという特徴があります。発泡プラスチック系断熱材の中では価格が安いメリットがあるものの、グラスウールなどに比べると価格は割高です。熱に弱いというデメリットもあります。
主なビーズ法ポリスチレンフォーム
ビーズ法ポリスチレンフォームとほぼ同じ素材を、 発泡させながら押し出して硬い板状にした断熱材です。プラスチックの粒がビーズ方よりも小さく、薄くても高い断熱性を発揮します。水に強く軽量で、 加工や施工がしやすい特徴があります。熱に弱いというデメリットがあります。ビーズ法ポリスチレンフォームよりも断熱性は高いです。基礎断熱や床断熱などに広く使用されています。
主な押出法ポリスチレンフォーム
3.まとめ
現在日本には、今回紹介したようにたくさんの断熱材があります。
断熱材の熱伝導率が低いほど熱を遮断しやすくなりますが、 熱伝導率の数値だけで断熱材を判断してはいけません。実際の断熱性能は断熱材の厚さや施工方法によって変わりますし、湿気・火事・害虫被害についても考慮しなければいけません。断熱性能は壁や床の断熱だけでなく、窓などの開口部の影響も多いことも考慮しましょう。また住宅の快適性は、 断熱性能だけでなく、気密性能や換気方法が適切に施工されて初めて実感できるものです。断熱材の選定はそのさまざまな要因の一つであると認識しましょう。
住宅会社によって、採用している断熱材はそれぞれ違います。自分の気に入った断熱材があるのであれば、その断熱材を採用している会社から説明を聞いてみるのがよいでしょう。その時は、開口部の断熱(玄関・窓)や気密性能・換気方法についてもしっかりその会社の考えを聞いてみましょう。
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