吹付断熱(発砲ウレタン)のメリットデメリットを解説します!
2022年05月08日
最近採用されることの多い、「吹付断熱」。
今回は吹付断熱のメリットとデメリットを解説いたします。
もくじ
4-4 透湿シートを下地とした場合、外壁通気層に影響がでる場合がある
4-5 自己接着性が高いため解体時にすべてが産業廃棄物になる可能性がある
1.吹付断熱とは?
吹付断熱とは、断熱素材を屋根や天井、壁、床へ直接吹き付ける断熱方法のことをいいます。この施工方法で使用される断熱材は発泡ウレタンと呼ばれています。液状の素材を霧状に吹き付けることで発砲・硬化させ、 スポンジ状に変化させます。 壁などに付着した発泡性ウレタンには細かい気泡が生成され、その細かい気泡に空気をためることにより断熱性能を高めています。
吹付断熱は、細い隙間にも断熱材を吹き付けることができるため、また接着性が高いため高い気密性を確保することができます。このような特性から近年住宅の断熱施工として利用する会社がかなり増えてきました。 住宅を検討する方の中にも、吹付断熱を検討される方が多くなりました。今回は、 最近人気の吹付断熱のメリットデメリットについてお伝えいたします。
2.吹付断熱の特徴
吹付断熱で使用される主な材料は硬質ウレタンフォームです。この硬質ウレタンフォームを現場で直接吹き付けます。吹付断熱は接着性が高いので、隙間などにしっかり入り込み、気密性がしっかり担保されるのが特徴です。
3.吹付断熱のメリット
3-1 断熱性能が高い
吹付断熱は、素材が硬質ウレタンフォームのため断熱性能は高いです。硬質ウレタンフォームは住宅だけではなく、 冷蔵庫や自動販売機、宇宙ロケットにまで使用されるなど断熱性能が高い材料だといえます。
3-2 気密性能をとりやすい
吹付断熱は、接着性が高いため、柱や梁などにしっかりと接着されます。 筋交いがあるところなど、隙間があるところでもぴったりと埋めて施工ができますので、気密性能が高くなります。吹付断熱を行っている工務店の気密試験の様子を見てみると、C値がかなり高いことが分かります。
3-3 遮音・吸音性にすぐれている
硬質ウレタンフォームは、その素材の中に細い空気の層がたくさん入っているため、断熱性の向上とともに、遮音性や、 吸音性にも優れているといえます。
3-4 壁内の結露やカビが発生しにくくなる
吹付断熱は、一定の透湿抵抗によって内部結露が起こりにくいのも大きなメリットです。自己接着力を持ちますから、壁に吹き付けた後ずれたりすることがありませんので断熱性能を維持します。内部結露が起こりにくく、形状変化もありませんのでカビが発生しにくくなります。
4.吹付断熱のデメリット
4-1 費用が高い
グラスウールに比べ、 費用が高くなります。建物の形状によっては、現場の吹き付け費用がより高くつくこともありますので、グラスウールと比較される方は費用の面をよく確認したほうがよいと思います。
4-2 施工品質にバラツキがある
吹き付け断熱に限った話ではありませんが、吹付断熱は現場で作業員が吹き付け作業を行います。 職人の腕で性能が変わるといったことも考えられます。十分な厚みを確保できないと、想定された断熱性能が得られません。施工技術が未熟で隙間ができてしまうような施工であると、 断熱性能はもちろん気密性能も低下してしまいます。気密性能は気密試験を行わないとしっかりしたデータで判断は出来ませんので、気密性能が気になる方は、気密試験を実施している工務店に依頼しましょう。
施工品質にかかわってくるのが、スキンカットです。スキンカットとは、吹き付け施工した後に、吹き付けしすぎた余分に室内側に出た発泡ウレタンを削り取る作業のことをいいます。 吹き付け断熱した場合、表面にはスキン層という吹き付けた後にできる、つるっとした層があります。 このスキン層が防湿層になって壁体内に湿度が入らないようになります。あまり吹き付けが上手でないと、 規定以上に吹き付けてしまい後からスキンカットをたくさんしなくてはならなくなります。スキンカットをすると防湿層が剥がされ、透湿しやすくなってしまいますから、品質が落ちてしまいます。
4-3 吹付断熱の熱伝導率はグラスウールと大差はない
近年普及し始めた吹付断熱ですが、性能が高いと思われている方が多いと思いますが、実は吹き付けタイプの発泡ウレタンは、工場などで作るボード系の硬質ウレタンフォームほど高い断熱性能はありません。 断熱材としての性能は、標準的なグラスウールと大差はありません。
吹付断熱 アクアフォーム 熱伝導率 0.036w/(m・k)
グラスウール アクリアネクストα 熱伝導率 0.034w/(m・k)
※w/(m・k)は「ワット」といいます。熱伝導率の単位。低いほど高性能。
4-4 透湿シートを下地とした場合、外壁通気層に影響がでる場合がある
吹付断熱は現場で施工を行うため、現場の状況が施工品質に影響します。外壁の下地が、胴縁のみで吹付断熱の下地が透湿防水シートのみの場合、吹付断熱の施工をすると発泡ウレタンが膨張し透湿防水シートを膨らませ外壁側に飛び出してしまうことがあります。 そうすると外壁下地に影響が出るだけでなく、透湿防水シートが破損した場合、防水効果が得られないため品質に悪い影響を与えてしまいます。 また、外壁の通気層を塞いでしまう可能性もあります。
外壁側には面材を施工してから吹付断熱を行うのが正しい施工方法です。
4-5 自己接着性が高いため解体時にすべてが産業廃棄物になる可能性がある
新築時に解体することまで考えている人がどこまでおられるかわかりません。吹付断熱をした住宅の解体は、分別処理することが難しくなります。自己接着性が高いのが吹付断熱の大きな特徴のひとつですが、接着性が高いため木材と発泡ウレタンの分別が難しくなるのです。 木材と発泡ウレタンがきれいに分離できれば、木材は再利用できる可能性があります。しかし木材に発泡ウレタンがこびりついてしまうと、 その木材は産業廃棄物として処理するしかなくなってしまいます。今新築している家を解体するのは何年後かわかりませんが、2022年現在でも持続可能な社会の実現のために、様々な取り組みがされているこのご時世で、将来に禍根を残すような施工方法になってしまう可能性があります。少しでも未来の地球のことを考えるのであれば、家を建ててから家を壊すまでのことをしっかりと考えた方が良いのではないかと考えます。
5.まとめ
最近、吹付断熱を採用している住宅会社が多くなってきました。選択肢が多いのは良いことだと思いますが、吹付断熱にしろグラスウールにしろ、 そのメリットデメリットをよく考慮して採用していただきたいと思います。断熱方法で依頼する住宅会社が変わるかもしれません。採用する断熱方法もその住宅会社の特徴だと思います。一つ一つの部材に対する考え方まで 住宅会社に尋ねてみるのも良いかもしれません。 自分の住宅に対する思いと提供される住宅を照らし合わせて選んでみてはいかがでしょうか。